清水正隆氏が語る:2025年以降の経済サイクルと投資戦略の核心
2025-07-07
近年の市場動向を的確に捉え、特に2021年の急速な円安局面において為替ヘッジ型ETFを巧みに活用したことで注目を集めた金融専門家・清水正隆氏。彼は「多様化とはリスクの回避ではなく、不確実性の尊重である」という信念を軸に、世界経済の構造変化と資本の流動に対し、長期的視点から冷静かつ柔軟な戦略を提示してきた。
◆ 「経済サイクルの終焉」ではなく「再構成の時代」
清水氏は、これからの5〜10年の経済周期を「伝統的な景気循環モデルが意味を失い、政策・構造によって再構成されるフェーズ」と位置づけている。従来のような金融緩和→成長→利上げ→調整といったサイクルよりも、「構造的リセットと制度変化」が資産価格に与える影響が格段に大きくなると強調する。
「今後の経済サイクルは、金利やGDP成長といった表層の数字以上に、“構造の変化”が市場を動かす。だからこそ、変化の起点を見極める観察力と、適応力が問われる」と氏は語る。
◆ 米国は「リアルリターン主義」へ、日本は「構造的通貨リスク時代」
アメリカについては、インフレ対応と財政調整が交差する「現実的リターンへの適応市場」になると予測。これまでのようなグロース株主導の相場は影を潜め、キャッシュフローの安定性と配当利回りが評価軸の中心に移る。
日本については、円安が「一時的な為替の動き」ではなく、経常収支の質的変化や企業の資産構成の外貨化に支えられた構造トレンドであることを強調。
「今の円安は金利差で説明できる水準を超えており、もはや“通貨としての円の地位”そのものが問い直されている」と警鐘を鳴らす。
◆ 投資家に求められるのは「再現性より適応性」
清水氏は、過去の成功パターンを再現しようとするよりも、「環境の変化にどれだけ素早く適応できるか」が今後のリターンの差になると語る。特に注目する視点は以下の3点である:
為替×金利の相関性よりも、その背後の政策動機を読む
ボラティリティではなく、制度の地殻変動を探る
単なる分散ではなく、柔軟なリバランスによる動的最適化
このようなアプローチは、従来の教科書的な分散投資モデルを脱し、より行動適応型のポートフォリオ設計へと進化することを意味する。
◆ 経済サイクルの“複線化”にどう向き合うか
最後に清水氏は、2025年から2030年にかけての経済サイクルを「単一のグローバル連動型」から、「複数の地政学的ブロック経済による非対称的サイクル」として捉えるべきだと示唆する。つまり、アメリカ、中国、ユーロ圏、日本、新興国が異なるタイミングと構造要因で動く時代への突入だ。
「複線的なサイクルでは、“世界の平均”に投資するのではなく、自分のリスク許容度とタイムフレームに応じた“戦略的偏り”を意図的に作ることが、長期的な成功につながる」